- 山梨大学医学部附属病院形成外科 百澤 明
- 埼玉医科大学名誉学長 山内俊雄
- gid.jp 山本 蘭
われわれ、性同一性障害の治療に従事する医療従事者には、日本精神神経学会の策定した性同一性障害治療ガイドラインの遵守が求められる。特に生殖機能を全廃する性別適合手術などは、母体保護法28 条への抵触を回避するために、性別適合手術適応判定会議での十分な検討と承認が必須である。
関東圏では、主に個々の大学病院やクリニックが個別にジェンダー医療を実施してきた。2018 年4 月、性別適合手術の公的保険適用が開始されたが、国内で性別適合手術を保険適用で受けるための条件として、判定会議での手術適応の承認(治療ガイドラインの遵守)に加えて、GID 学会認定医資格の取得、さらには実施施設の施設基準などが示され、公的保険適用で手術を実施するための厳しい条件が設定された。
関東圏には、埼玉医科大学ジェンダー医療推進委員会をはじめ、いくつかのジェンダー判定委員会が組織されている。しかし、それらの医療チームに所属しない性同一性障害の治療に真摯に取り組む医療従事者も少なくない。山梨大学では、形成外科診療科長の百澤が所属する埼玉医科大学ジェンダー医療推進委員会のみならず、これらのジェンダー医療チームからの判定会議承認症例の紹介を受けて手術を施行しているが、たとえ正しく診断され完璧な意見書が作成されていたとしても、これらの医療チームに所属しない精神科医からの紹介では手術を実施するわけにはいかず、判定会議機能を有する精神科医への再受診を求めざるを得ない状態となっている。
一方、性同一性障害の外科治療を取り扱いたいと考えている形成外科医、産婦人科医、泌尿器科医の相談もしばしば受けるようになった。しかし、医療チームの構築は容易ではなく、参加しようにもハードルが高すぎる状態となっており、これがジェンダー医療が広がらない要因の一つとなっているとも考えられる。
そこで、われわれは関東圏に所属施設の垣根を越えたジェンダー医療チームを構築する必要があると考えるに至った。医療チームの構成により、判定会議機能の提供だけでなく、参加者による情報の交換や相談、医療技術の研鑽などが可能となり、より質の高い医療を提供することにつながり、ひいてはジェンダー医療を必要とする当事者の利益につながると考えられる。
今回は、現時点での構想を説明し、参画について興味のある医療従事者や関係各方面の方々と意見交換を行いたいと考えている。