第54回 日本神経病理学会総会学術研究会を平成25(2013)年4月24日(水)−26日(金)、東京都江戸川区「タワーホール船堀」にて開催させていただくにあたり、ご挨拶申し上げます。
日本神経病理学会は、形態病理を基本とし、神経組織研究を通じ病態解明を行うことを目標としている点で、欧米の神経病理学会との共通点を有しています。しかし、欧米の神経病理学会が、脳腫瘍・神経筋生検を含む外科病理診断、ブレインバンクの下支えとしての神経病理診断の提供、アルツハイマー病研究、プリオン病サーベイランス等における、病理コアとして、いわゆる「役に立つ神経病理」として社会貢献の面を強調している点は、学ぶべきと考えます。本学会の発展、さらに次世代の方々に魅力あるものとして、後継者を育成していく点で重要と考え、「神経病理学の社会貢献」を本学術会議のテーマとさせていただきました。
オープニングレクチャーには、アミロイドペットリガンド国際治験組織病理研究第3相を主導したReininger女史にお願いし、創薬における神経病理の重要性を強調していただくとともに、日本の女性研究者に元気を与えて欲しいとお願いしてございます。これは、世界71剖検登録例中23例が本邦ブレインバンク生前登録者で米国に次いでおり、本邦の貢献が大きいこと、そして篤志を示された生前登録者の方々へ、人類に貢献する夢を生前に与えてくれた感謝の気持ちを込めてのことです。 スライドセッションは米国神経病理学会にならい、公募、かつ大学院生・後期研修医の発表には旅費援助と、教育コース参加費・テキスト代を無料にするかたちとしました。
会長シンポジウムのテーマには、私の生涯テーマである「ブレインバンク」を選ばせていただきました。ブレインバンク活用側として、辻省次博士、岡澤均博士、構築側として、丹羽真一博士(福島精神疾患ブレインバンク)、 Beach博士(Sun City Brain and Body Donation Program)、指定発言をCairns博士(US- ADNI2、DIAN病理コア)、鈴木衣子ノースカロライナ大学名誉教授(高齢者ブレインバンク)にお願いし、英語で行わせていただきます。また、もう一題は公募とさせていただき、プログラム委員会の投票で、「定義と区別 -病態を反映した細胞病理の見方」(提案:内原俊記博士)に決定しました。 特別講演は、前述のワシントン大学Cairns教授に、「AutopsyConsent, Brain Collection, and Standardized Neuropathologic Assessment of ADNI Participants: the Essential Role of the Neuropathology Core」をお話いただく予定で、J-ADNI PI岩坪威博士に座長をお願いしています。
また会長主導ミニシンポジウムとして、核内封入体病の臨床・画像・病理所見、レビー小体病の皮膚生検、死後脳研究成果、画像・病理連関、生物学的精神医学会共同セッションを設けさせていただきました。
新しい展開点を迎え、神経病理学会をより魅力あるものにすべく努力していく所存です。是非皆様のご参加をお願いします。
第54回日本神経病理学会総会学術研究会
会 長 村山 繁雄